イタリアの夏野菜と言えば、真っ先にトマトが思い浮かびますが、ズッキーニも代表的な夏野菜。
イタリアでは形や色の異なるさまざまなズッキーニが出回り、色々な料理に使われます。
日本でも近年ズッキーニを日常的に食べるようになりましたが、店頭で見かけるのはキュウリに似た濃い緑色のずんぐりとした円筒型で表面がつるっとしたズッキーニ。
イタリアではこのタイプのズッキーニは年中スーパーに並びますが、初夏から夏にかけては、固定種の黄緑色のズッキーニや花ズッキーニが主役に。
ズッキーニについての豆知識やイタリアで出回る品種のうち、夏の代表的な円筒型で黄緑色のズッキーニ、花ズッキーニ、丸ズッキーニを紹介します。
ズッキーニはかぼちゃの仲間
イタリア語でズッキーニは『小さなかぼちゃ』
ズッキーニは見た目はキュウリに似ていますが、実はかぼちゃの仲間です。
イタリア語では、ズッキーニ1個は zucchina (ズッキーナ)、複数で zucchine (ズッキーネ)、かぼちゃ1個は zucca (ズッカ) と言います。
かぼちゃに、イタリア語でよく使われる『小さい』を表す指小辞 (~ino/a) が付いてズッキーニ (zucca + ina) 、直訳すると『小さなかぼちゃ』です。
なので、イタリア語ならズッキーニはかぼちゃの仲間だとわかります。
余談ですが、なぜ日本ではズッキーナでもズッキーネでもなく、ズッキーニなのか長い間疑問に思っていましたが、調べてみると単に英語で zucchini (ズッキーニ) だからなのだそう。
それでも、いまだに『ズッキーニ』と聞くと違和感を覚え、やっぱり『ズッキーネ』と呼んでしまいます。
かぼちゃから誕生したズッキーニ
分 類:ウリ科カボチャ属
原産地:北アメリカ南部&メキシコ
旬: 6月~8月
ズッキーニは北アメリカが原産ですが、16世紀頃にヨーロッパに持ち込まれ、特にイタリアや南フランスに普及しました。
その後、19世紀後半にイタリアで改良され、円筒型のズッキーニが誕生。
20世紀以降各国に伝わり、日本には20世紀後半にアメリカから輸入され、近年日常的に食べるようになりました。
世界的に見ても、ズッキーニは比較的新しい野菜なのです。
ズッキーニは主に実を食べる実野菜で、果菜類とも言われます。
淡色野菜に分類されますが、緑黄食野菜に多く含まれるカロテンをたっぷりと含み、低カロリー。
皮ごと食べ、スライスすると茄子のような薄い黄色の果肉で、ほんのり甘みのある、さっぱりした味わいです。
基本的には加熱調理し、茹でて良し、焼いて良し、煮て良し、揚げて良し。
特に油との相性が良く、イタリアではオリーブオイルを使って調理します。
カロテンは油と一緒に摂ると吸収率が高まるので、効率的に栄養がとれる理にかなった調理法です。
イタリアのズッキーニの種類
地域によって多種多様な品種
イタリアではズッキーニは定番野菜で、お馴染みの円筒型をはじめ、色や形が異なるさまざまな品種のズッキーニが楽しめます。
地域ごとに個性的な品種が作られています。
個人的にズッキーニはイタリアで大好きになった野菜のひとつで、特に夏の間は買物に行く度に買って、毎日のように食べていました。
パスタやリゾットに、フリットやグリル、カポナータ(トマトや茄子、パプリカなど夏野菜の煮込み)、スフォルマート(スフレ)など、さまざまな料理に使えるため、毎日食べても飽きない夏野菜です。
円筒型の細長いズッキーニ
深緑色のズッキーニ
最も一般的なズッキーニは円筒型。
スーパーに年中並ぶ、ズッキーナ・ネーラ・ディ・ミラノ (zucchina nera di Milano) は深緑色で黒みがかっているのが名前の由来(伊語で黒は nero/a) です。
ずんぐりとした円筒型で、キュウリのように濃い深緑色、表面はつるっとした、日本で出回っているズッキーニと形状や味が似ています。
黄緑色のズッキーニ
フィレンツェでは、初夏から夏にかけて、フィレンツェ近郊で栽培される黄緑色のズッキーナ・ルンガ・フィオレンティーナ (zucchina lunga fiorentina) やズッキーナ・ロマネスカ (zucchina romanesca) が出回ります。
豊富な種類の中でも最も美味しいと言われている品種です。
実が小振りで、形状は細長く、縦方向に立体的な縞(膨らみ)があり、断面が星形に近く見えることもあります。
表面に産毛があり触るとチクチクします。
実をスライスすると淡い黄色で、果実本来の優しい甘みがギュッと凝縮したような味がします。
一般的な深緑色のズッキーニと同じように料理しますが、ズッキーニのおいしさがよりしっかり感じられます。
新鮮なズッキーニなら、生のまま薄くスライスしてカルパッチョにして、猛暑に火を使わずにさっぱり食べることも。
花ズッキーニは初夏が旬の食材
花ズッキーニとは?
イタリアではズッキーニの花は初夏が旬の食材!
花ズッキーニはイタリア語では fiori di zucca (フィオーリ・ディ・ズッカ)、直訳すると『かぼちゃの花』。
やっぱりかぼちゃです。
花が主役の花ズッキーニは、ズッキーニの実が大きくなる前に蕾を食べるため、小さな実に花がついています。
これがまたなんとも言えない美味しさなのです!
開花前の花だけをカットしたパック売りもあります。
花は傷みやすく、変色しやすいので、新鮮なズッキーニを選んで早いうちに消費します。
ビタミンが豊富で、消化が良い食材です。
花ズッキーニを揚げたフリットはサクサクと香ばしく、独特の味と食感に魅了され、夏が来る度に舌鼓を打ちました。
ズッキーニの雄花と雌花
ズッキーニには雄花と雌花があり、どちらも初夏の短い期間に食材として店頭に並びます。
雌花は小さな実の先に花の蕾が付いています。
雄花は茎からすっと伸び、鮮やかな黄色の大きな花が咲きます。
雄花と雌花が同時期に開花して、受粉すると実ができます。
コロンとした形が愛らしい丸ズッキーニ
コロンと丸い形がかわいい丸ズッキーニも夏のイタリアの風物詩です。
イタリア語では、zucchina tonda (ズッキーナ・トンダ)。
この形状を見ると、かぼちゃの仲間だと想像できます。
円筒型と味に違いはありませんが、白い果肉が多い分、柔らかくみずみずしく感じられます。
細長いズッキーニと同じように調理できますが、この丸い形を活かして、中の果肉をくり抜き、丸ズッキーニを器のようにして挽肉を詰め、オーブンで焼いた丸ズッキーニの詰物が代表的な料理です。
イタリアのズッキーニが味わえる日を願って
イタリアでよく食べていた黄緑色のズッキーニや花ズッキーニを思い出すと、思わず「食べたい!」という衝動に駆られます。
数年前、日本でオーガニック栽培の農家さんが作られた丸ズッキーニに出会って、少し高価でしたが試しにひとつ買ってみました。
その日の朝に収穫されたズッキーニの表面はピッカピカで、果実はみずみずしく、イタリアで食べていたズッキーニの味が懐かしくなりました。
珍しい野菜を育てられている農家さんもいらっしゃいますが、市場に出回らずに一般人の手に入らない野菜が多いのが現状です。
日本には日本にしかない美味しい野菜がいっぱいあるけれど、イタリアのズッキーニの美味しさは格別。
日本でも黄緑色のズッキーニや花ズッキーニが身近に手に入るようになればいいなと願っています。
旬の野菜が一番美味しく、体にも良く、お財布に優しい、それを教えてくれたのはイタリアです。
ズッキーニが美味しくなる季節、旬の夏野菜をしっかり食べて、暑い夏を乗り切りましょう!