イタリア料理にはさまざまなハーブを使います。
なかでも、ハーブの王様と呼ばれるバジルはイタリア料理には欠かせない存在。
独特の風味と鮮やかな緑色が料理を引き立ててくれます。
バジルはトマトや茄子など夏野菜との相性が抜群で、イタリアの夏の料理にはフレッシュなバジルをふんだんに使います。
バジルについての豆知識や栄養価、効能、バジルを使った定番イタリア料理やおうちで育てたバジルで作る簡単イタリアンを紹介します。
バジルの豆知識
ハーブの王様、伊語ではバジリコ
日本では英語名の『バジル』が浸透していますが、イタリア語では basilico (バジリコ)です。
名前の由来は、英語名、伊語名のどちらもギリシャ語の『王』を意味するバシレウスに由来するという説や、王がつける香水を作るために使われたからという説など諸説あります。
分 類: シソ科メボウキ属
原産地: インド&熱帯アジア
旬: 6月~10月
バジルの原産地はインドや熱帯アジア。
紀元前350年頃、アレクサンダー大王の時代に古代ギリシャやイタリアに持ち込まれ、16世紀にイギリスやアメリカで栽培されるようになりました。
日本に伝わったのは江戸時代。
当時は食用ではなく、バジルの種が目を掃除する箒(ほうき)として使われていたそうです。
20世紀以降、イタリア料理の人気に伴って、フレッシュなバジルが普及しました。
バジルの栄養価と効能
バジルは緑黄色野菜に含まれるβカロテンやビタミンE、カルシウム、鉄分が豊富で栄養価が高いハーブです。
βカロテンは体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜を健やかにする働きや、抗酸化作用や免疫賦活作用があります。
さらに、独特の甘い香りには、鎮静効果や食欲増進、消化機能促進、鎮痛、殺菌、抗菌、防虫などの作用があるといわれています。
ただ、香りの成分は熱に弱いので、料理の仕上げに加えたり、盛り付けにフレッシュな葉を添えたりして、生のままや生に近い状態で使うのがベストです。
最も一般的な品種はスイートバジル
バジルにはさまざまな品種がありますが、最もポピュラーな品種はスイートバジルです。
一般的にバジルというと、このスイートバジルのことを指します。
スイートバジルは甘くてスパイシーな香りが強いのが特徴。
イタリア料理には欠かせないハーブで、パスタやピッツァ、サラダなど幅広い料理に使われます。
イタリア料理とバジリコ
スイートバジルを使ったイタリア料理
スイートバジルはパスタやピザ、サラダなど幅広い料理の素材として使われたり、仕上げに添えられたりして、イタリア料理に引っ張りだこ。
料理を風味豊かに、彩り良く引き立ててくれます。
特にトマトや茄子と相性が良く、バジルが収穫できる夏の間は大活躍!
トマトとモッツァレラチーズ、バジルを交互に盛り合わせた caprese (カプレーゼ)やトマトソースの上にモッツァレラチーズとバジルを乗せたピッツァ・マルゲリータはイタリア料理の定番です。
バジルと松の実、オーリーブオイル、ニンニクを合わせてペースト状にしたpesto alla genovese (ペスト・アッラ・ジェノヴェーゼ)はバジルが主役のソース。
『母を訪ねて三千里』で知られる港町ジェノヴァ発祥なので、ジェノヴァ風と名前がついていますが、イタリアでは pesto (ペスト)だけでもこのバジルペーストのことです。
パスタに和えると、爽やかなバジルの風味が最大限に味わえるので、我が家でも夏の間のヘビロテメニューでした。
おうちで育てるスイートバジル
バジルはスーパーや八百屋さんで手軽に手に入ります。
行きつけの朝市のお店では、野菜を買うと、バジルやイタリアンパセリなど定番ハーブをサービスしてくれました。
イタリアでは、バジルはとても身近で親しみのあるハーブなのです。
生のバジルが出回っているので、乾燥バジルを使う機会はほとんどありませんでした。
ただ、フレッシュなバジルは摘んでから時間がたつとすぐに黒くなって、傷んでしまいます。
寒さに弱いため、冷蔵庫に保存しても葉が黒くなり、数日しか持ちません。
なので、家で育てて使う分だけ都度摘めるように、毎年春になると、苗を買って窓辺で鉢植えのバジルを育てていました。
バジルは多年草ですが、寒さに弱く、ヨーロッパや日本では越冬できないため、1年草として扱われます。
成長すると60 cm程の長さになり、穂先に小さな白い花を咲かせます。
花が咲くと葉っぱが硬くなるので、花が咲く前にカット。
バジルはわき芽の上をカットすると、背が高くならずにわき芽が伸びて、こんもりと育ち、どんどん葉っぱが増えます。
いつもフレッシュなバジルが食べられるだけでなく、家の中に緑があると気持ちが和みます。
育てたバジルで手軽にイタリアン
イタリアに住んでいた時は、自分で育てたバジルを使って、家で簡単なイタリアンを作っていました。
前述のカプレーゼは一般的なモッツァレッラでも十分美味しいですが、水牛のモッツァレッラ (mozzarella di bufala モッツァレッラ・ディ・ブファラ)で作ると絶品!
でも、日本のモッツァレッラでは味が薄く、物足りないと感じてしまい、本場の味にはかなわないと実感する一品でもあります。
そこで、日本でも一般的に手に入る食材で、簡単に作れる2品を紹介します。
プチトマトとバジルのパスタ
- オリーブオイルをニンニクで香り付けして、カットしたプチトマトを軽く炒める
- アルデンテに茹でたパスタを合わせてさっと炒め、仕上げにフレッシュなバジルを加える
- お皿に盛り付け、上からパルミジャーノチーズをふんだんに削る
プチトマトの酸味と甘味、バジルの爽やかな風味が味わえます。
スパゲッティやスパゲッティーニなどロングパスタがおすすめ。
生野菜のサラダ
- レタス、トマト、キュウリなどの生野菜に摘み立てバジルをちりばめる
- サラダに塩と上質なエキストラ・ヴァージン・オリーブオイル、ワインビネガーを少量かけて混ぜ合わせる
バジルを加えると、彩りの良い生野菜のサラダが出来上がり、香り成分が食欲をそそってくれます。
ドレッシングを使わず、オリーブオイルをベースにシンプルに味付けするのがイタリア流。
どちらもフレッシュなバジルのおかげで、味も彩りも、そしてイタリア気分も見事にアップします!
日本でバジルを育ててイタリアの味を楽しむ
帰国してから、イタリア料理を作ろうとしても、家にバジルがないのが不便に感じました。
乾燥バジルでは代用できず、スーパーにバジルを買いに走ると、目立たないところにちょこんと置いてあり、少量でしかも高い。
あまり売れないせいか、傷んでいたり、元気がなかったりして、結局買わずに諦めたことが何度もあります。
この春、スイートバジルの苗を買って、プランターに植えました。
日当たりが良いため、すくすくと育って、どんどん新しい葉が出てきます。
これで、いつでも好きな時にバジルを採って、料理に使えます。
フレッシュなバジルを加えるだけで、見た目も、味も全然違います!
その上、栄養があり、爽やかな香りが食欲を促してくれたり、消化を助けてくれたりするので、まさに暑い夏にぴったり!
この夏は摘み立てのバジルをふんだんに使って、イタリアの味を楽しんでいます。