株主優待とは、企業が株主に割引券や優待券、自社製品やサービスなどを提供する制度です。
ビール業界大手4社の一角をなすキリンビールを傘下に持つ、キリンホールディングスは自社のビール詰め合わせセットなどがもらえる人気の株主優待銘柄。
2024年8月、キリンHDは株主優待制度の変更を発表。
これまでの制度から大きく変わり、長期保有株主を優遇する制度になります。
キリンHDの株主優待制度について、株主優待を受けるための手続きや変更内容、現行制度との比較、変更時期、継続保有開始日からどの優待品が受け取れるのかなどをまとめました。
株主優待は企業から株主へのプレゼント
株主優待とは?
株主優待とは、企業が株主に割引券や優待券、自社製品やサービスなどを提供する制度です。
権利付最終日(権利確定日から起算して3営業日前の日)の大引け時点で保有していれば、株主優待を取得することができます。
株主優待制度を知ったきっかけ
私自身は数年前まで株式投資とは無縁でしたが、家族が株式投資をしていました。
イタリアから一時帰国すると、株を保有している企業から自社商品やサービスの割引クーポンなどが届き、株主優待という制度があることを知りました。
そのなかのひとつ、ビールメーカーの株主優待はビールや清涼飲料水をはじめ自社の飲食料品等をもらえる特典があります。
キリンHDの株主優待を受けるための手続き
キリンホールディングスとは?
キリンホールディングス株式会社はキリングループの持株会社です。
主要傘下企業
- ビールメーカーのキリンビール
- 清涼飲料水メーカーのキリンビバレッジ
- ワインメーカーのメルシャン
- ビアレストランを展開するキリンシティ
- 乳製品メーカーの小岩井乳業
- 医療用医薬品メーカーの協和キリン
1907年に麒麟麦酒創業以来、100年以上にわたって成長を続けています。
キリングループはビール事業から飲料など食領域において事業を展開、1980年代以降に発酵の研究から発展した技術やバイオテクノロジーを活用し、医領域、ヘルスサイエンス領域へと事業領域を拡大させました。
現在は食領域(酒類・飲料事業)、ヘルスサイエンス領域、医領域の3つの事業領域を柱に据えています。
食領域は祖業であるビール事業を中心に現在も基盤となる事業領域で、グローバル展開も推進。
ビール事業では、発売から35周年を迎えた主力の『一番搾り』や今年4月新発売の『晴れ風』などのブランドを持ち、長年ビール類で国内出荷量のトップを争うメーカーです。
ヘルスサイエンス領域は、食領域での自然由来の原料や、発酵、培養の研究を進める中で発見したプラズマ乳酸菌を配合した免疫ケアシリーズ等機能性表示食品が話題の成長事業領域です。
医領域では、ビール製造で培った微生物や細胞の研究から発展した技術にバイオテクノロジーを掛け合わせ、1980年代に医薬品の研究開発を開始、現在はグループの主要事業に発展しています。
キリンホールディングスの株主優待の内容
権利確定月 | 12月末日 |
単元株数 | 100株 |
優待の内容 | ・優待品 ・プレミアム優待(抽選) |
株主優待制度の対象となるのは、100株以上を継続して1年以上保有する株主です。
所有株式数と継続保有期間によって内容が異なります。
キリンHDの株主優待制度の内容
12月末日保有株数 | 継続保有期間 1年以上3年未満 優待品 | 継続保有期間 3年以上 優待品 |
---|---|---|
100株以上1,000株未満 | 500円相当 | 2,000円相当 プレミアム優待 |
1,000株以上3,000株未満 | 1,000円相当 | 4,000円相当 プレミアム優待 |
3,000株以上 | 1,000円相当 | 6,000円相当 プレミアム優待 |
優待品の具体的な内容については、2025年3月頃に案内される予定。
継続保有期間が3年以上の株主には、新しくプレミアム優待が追加され、特別な商品や割引サービスなどを抽選で贈呈される予定です。
キリンホールディングスの株を購入する
キリンHDの株主優待を受けるためには、まず、キリンホールディングス(株)の株を100株以上購入します。
証券会社の検索画面から、社名又は各上場銘柄に当てられた数字4桁の証券コードを入力して検索。
キリンホールディングスの証券コードは<2503>です。
継続して1年以上、権利付最終日まで保有する
キリンHDの株を100株以上購入後、継続して1年以上かつ12月末日の権利確定日まで保有すると、株主優待を受けられます。
継続して1年以上保有する株主とは、3月末日、6月末日、9月末日、12月末日の株主名簿に、同一株主番号で5回以上連続して100株以上の保有が記録されていることと定められています。
従来の株主優待の流れは、
- 12月末日、優待権利確定
- 3月上旬、『株主様ご優待のご案内』が届く
- 優待品カタログから希望の品を選んで申込む
- 4月中旬~7月下旬に優待品が届く
変更後も、3月に具体的な優待品の案内が届く予定なので、同じようなスケジュールで進められそうです。
キリンHDの株主優待制度の変更でなにが変わる?
継続保有株主を優遇する制度に変更
2024年8月6日にキリンホールディングスは株主優待制度の変更を発表しました。
より多くの株主に、中長期にわたり継続的に株式を保有してもらうことを目的として、従来の株主優待制度から大きく変わります。
3年以上継続的に保有すると、優待品がアップグレードするのがポイント。
例えば、保有株式数が100株の場合、従来の優待品は1,000円相当でしたが、新制度では、3年以上保有すると優待品は2,000円相当に増額され、さらにプレミアム優待がもらえるチャンスがあります。
株主優待制度の詳細は、キリンホールディングスウェブサイトの株主優待制度の変更に関するお知らせをご確認ください。
現行の株主優待制度との比較
変更前の株主優待
12月末日保有株数 | 優待品 |
---|---|
100株以上1,000株未満 | 1,000円相当 |
1,000株以上 | 3,000円相当 |
変更後の株主優待
12月末日保有株数 | 継続保有期間 1年以上3年未満 優待品 | 継続保有期間 3年以上 優待品 |
---|---|---|
100株以上1,000株未満 | 500円相当 | 2,000円相当 プレミアム優待 |
1,000株以上3,000株未満 | 1,000円相当 | 4,000円相当 プレミアム優待 |
3,000株以上 | 1,000円相当 | 6,000円相当 プレミアム優待 |
株主優待の4つの変更点
- 1年の継続保有期間要件の導入
- 継続保有期間に応じた優待の傾斜導入
- 継続保有期間3年以上の株主に『プレミアム優待(抽選)』追加
- 継続保有期間3年以上かつ3,000株以上の優待の新設
1年の継続保有期間要件の導入
新制度では、1年以上保有することが必須条件になりました。
従来の株主優待制度では、権利確定日の12月末日に100株以上保有していれば、所有株数に応じて優待品をもらえたので、優待対象外の期間が1年延びます。
継続保有期間に応じた優待の傾斜導入
優待品の内容は保有株数と継続保有期間によって決まり、継続して3年以上保有すると、優待品がアップグレードされます。
100株以上3,000株未満は、金額ベースで4倍の優待品に!
3,000株以上は、なんと6倍に!
継続保有期間3年以上の株主に『プレミアム優待(抽選)』追加
継続保有期間が3年以上になると、プレミアム優待として、特別な商品や割引サービスなどがもらえる抽選の対象になります。
新設の優待なので、商品や割引サービスの内容や当選倍率などは現時点では不明ですが、どのような優待が用意されるのか期待が高まります。
継続保有期間3年以上かつ3,000株以上の優待の新設
継続保有期間3年以上かつ3,000株以上の株主を対象とした優待が新設されます。
保有株数については、従来の100株以上1,000株未満と1,000株以上の2区分から、それぞれ継続保有期間3年以上の区分が加わり、さらに3年以上継続保有の株主に限り、3,000株以上の区分が追加され、合わせて5区分になります。
現行制度から具体的になにが変わる?
- 1年以上の継続保有が必須
- 1年以上3年未満保有の株主には優待品が減額
- 3年以上保有の株主には優待品が増額
1年以上の継続保有が必須
これまでは12月末日の権利確定日に保有すれば優待を取得できましたが、2024年12月実施分より1年以上の保有が条件になります(一部条件に合致する株主を除く)。
最短でも丸1年は優待が受けられない期間が発生します。
1年以上3年未満保有の株主には優待品が減額
1年以上3年未満保有の株主がもらえる優待品は変更前より減額されます。
100株以上1,000株未満の場合は半減して500円相当、1,000株以上の場合は2,000円相当減額されて1,000円相当に。
従来の制度と比べて減額になり、がっかり感は否めません。
3年以上保有の株主には優待品が増額
その反面、3年以上保有すると、優待品は変更前より増額されます。
100株以上1,000株未満の場合は2倍の2,000円相当、1,000株以上3,000株未満の場合は1,000円増額されて4,000円相当、3,000株以上の場合は2倍の6,000円相当に。
さらに、3年以上保有の株主に『プレミアム優待』が追加されます。
3年以上の継続保有で優待品が大きくアップグレードするのは握力向上に繋がりそうです!
優待品の内容は?
優待品の内容については、2025年3月頃に案内される予定です。
従来の株主優待では、保有株式数に応じてキリンビール詰め合わせセットやキリンビバレッジの商品詰合せセット、キリンiMUSE免疫ケアサプリメントなど数種類から選択できました。
例えば、2023年12月期のビールの詰め合わせセットは100株以上1,000株未満は4本(一番搾り2本 & SPRING VALLEY 2本)、1,000株以上は12本。
変更後はどのような内容になるのか、ささやかな楽しみです。
ビール業界大手4社の株主優待の動向
企業名 | 株主優待 | 備考 |
---|---|---|
サントリー食品インターナショナル | ― | |
アサヒグループHD | ― | 2024年8月に株主優待廃止を発表 |
キリンHD | ○ | 2024年12月末日の基準日より変更 |
サッポロHD | ○ | 2018年12月期より長期保有株主(3年以上)を優遇する制度を導入 |
ビール業界大手4社の株主優待制度はどうなのでしょうか?
2023年までは大手4社のうち、サントリー食品インターナショナルを除く、3社は株主優待を実施し、ビールや飲食料品など自社製品の詰め合わせなどを提供。
近年の株主優待制度の廃止の流れを受け、アサヒグループホールディングスが2024年8月に株主優待廃止を発表して、2023年12月実施分を最後に株主優待は終了。
2024年10月現在、キリンホールディングスとサッポロホールディングスの2社のみ、株主優待を継続しています。
なお、両社は長期保有(3年以上)を優遇する制度に変更しました。
さらに、キリンHDは1年以上の継続保有が条件になります。
株主優待の新トレンドは『中長期保有』!
キリンHDの株主優待の変更時期と移行経過期間
株主優待の変更時期と移行経過期間
2024年12月末日を基準日とする株主優待制度より、変更後の新制度が適用されます。
ただし、2024年12月末日の基準日に継続保有期間が1年未満であっても、2024年1月~2024年9月末の期間に100株以上購入した株主に限って、1年間継続保有とみなされ、新制度の優待品が提供されます。
2024年12月末日の基準日に継続保有期間が1年以上3年未満の株主には、新制度への移行経過期間が設けられ、継続保有期間が3年に達するまで(最長2025年12月末日まで)、現行制度の優待品が贈呈されます。
結局、受け取れるのはどの優待品?
案内文を読んでもなんだかややこしく、結局自分がもらえるのはどの優待品なのかを知りたいところです。
そこで、継続保有開始日別に適用される制度と受け取れる優待品をまとめてみました。
2024年12月末日を基準日とする優待品
継続保有開始日 | 優待品 |
---|---|
2024年10月以降 | 対象外 |
2024年1月~2024年9月末 | 新制度 (1年以上3年未満) |
2022年1月~2023年12月 | 現行制度 |
2021年12月以前 | 新制度 (3年以上) |
2024年10月以降に100株以上購入した場合、新制度が適用され、優待品がもらえるのは2025年12月期です。
2024年1月~2024年9月末の期間に100株以上購入した場合は、新制度の優待品がもらえます。
2023年以前に購入して継続保有している場合は、継続保有期間が3年に達するまで現行制度が適用されます。
つまり、2023年中に100株以上購入して継続保有していると、新制度により優待品が減額されずに、現行制度の優待品を受け取れます。
制度変更に伴う不利益を避けるための、企業の心遣いなのでしょう。
2021年12月以前に購入して継続保有している場合は、新制度の3年以上の区分になり、優待品がアップグレードします!
株主優待にはメリットとデメリットがある
株主優待はメリットだけではない
ここまでキリンホールディングスの株主優待制度の変更についてまとめました。
ビールや清涼飲料水をはじめ、プラズマ乳酸菌のiMUSEサプリシリーズなど、キリングループの飲食料品に愛着がある人にとって、魅力的な優待です。
配当利回りも悪くありません。
でも、株式投資にはデメリットもあります。
株主優待目的で株を購入する前に、メリットだけでなく、デメリットも知っておくことが大切です。
株主優待のデメリット
- 資金拘束される
- 株価変動によるリスクがある
- 株主優待廃止のリスクがある
資金拘束される
キリンホールディングスの株式を購入して保有するため、購入価格分の資金が拘束されます。
これから購入する場合は、最短でも1年以上保有しないと優待は受けられないので、資金に余裕があるかどうか、十分ご検討ください。
価格変動によるリスクがある
株価は日々変動します。
上がることがあれば、下がることもあります。
そのリスクを受け容れられるかどうか、ご検討ください。
株主優待廃止のリスクがある
企業の方針で株主優待制度が変更されたり、廃止になる可能性があります。
さらに、株主優待廃止の発表により、株価が下がるリスクもあります。
気長に保有して、アップグレードした優待品をもらってみる!
株主優待を目的にした投資は、数ある投資手法のなかのひとつ。
さらに、株主優待を実施する企業はこの数年で減少傾向にあります。
それでも、株主優待は投資を始めるきっかけを作ってくれたり、株式投資の敷居を低くしてくれたり、投資初心者にとっては嬉しい制度です。
私自身、優待目当てに株式投資に関心を持ち、初めて購入したのは株主優待銘柄です。
その後、株式投資に関する本を読んだり、自分なりに勉強して、現在は他の投資手法にシフトしている段階です。
キリンホールディングスの株主優待は中長期で保有する株主にとってはポジティブな制度に変わります。
今後購入すると、12月末日を迎えても、1年目は優待が受けられない上に、継続保有期間が3年に達するまで優待品は現行制度よりも減額されますが、3年を超えるとアップグレードされ、さらにプレミアム優待が当たるチャンスもあります。
100株単位で購入する資金があれば、配当金と年に1度自社製品のプレゼントをもらいながら保有する楽しみを体験できます。
今年1月に始まった新NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠を活用して、気長に配当金と優待品を受取りながら、3年以上保有、アップグレードした優待品をもらってみるのも、ひとつの選択肢になりそうです。
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