イタリア発祥のジェラート。
ジェラートはミルク、砂糖などをベースにチョコレート、珈琲、リキュール、果物、果汁などさまざまな食材を加えて凍らせたスイーツで、素材の風味がストレートに味わえます。
イタリアでは、夏になると毎日のようにジェラートを食べる人がいるほど愛される、身近で手頃な氷菓子。
昼間はもちろん、日没が遅い夏のイタリアでは、夕食後にジェラートを食べに出かけて、夜遅くまで涼む習慣があります。
イタリアのジェラートについて、美味しいジェラートを見極めるコツ、ジェラートの買い方、歴史、日本のアイスクリームとの違いなどを夏の思い出と共にまとめました。
イタリアのジェラート
ジェラートとは
イタリア生まれのジェラートはイタリア語で gelato、『凍った』という意味の氷菓子。
ミルクと砂糖をベースに生クリームやチョコレート、珈琲、リキュール、果物、果汁などさまざまな食材を加えて凍らせ、素材の風味がギュッと閉じ込められています。
ジェラート専門店はジェラテリア (gelateria) 。
イタリアでは街のあちこちにジェラテリアがあり、こだわりが詰まったフレッシュなジェラートが楽しめます。
イタリア人は老若男女ジェラートが大好き。
それぞれ行きつけのジェラテリアが何軒かあり、その時の気分やエリアによって、行き先が決まります。
夏の夜のそぞろ歩きとジェラート
とても暑いイタリアの夏。
日本に比べると湿度が低いとはいえ、気温は40度近くに上がる日もあります。
しかも、一般的な家にはクーラーがありません。
サマータイムを採用しているので、日が長く、暗くなるのは21時頃。
夕食の時間も日本より遅く、20時~21時が一般的です。
夕食後、暑さが少し和らいだ頃、そぞろ歩きに出かける人で街はにぎわいます。
夜のそぞろ歩きはイタリアの夏の風物詩。
イタリアでは夜遅くまで開いているジェラテリアが多いので、ジェラートを片手に楽しそうにおしゃべりする人でいっぱいです。
自宅で夕食を済ませて、友達と会ってジェラテリアを目指して歩いたり、友達の家で夕食を楽しみ、食後のデザートにジェラートを食べに行ったり、毎日のようにジェラートを食べる人も少なくありません。
もちろんイタリアにも市販のジェラートはありますが、家にストックしなくても、食べたいときに手軽に本格ジェラートが食べられるのが魅力。
なので、ジェラートと言えば、ジェラテリアのフレッシュな自家製ジェラートなのです。
美味しいジェラートを見極めるコツ
- ジェラートが見えない
- 旬の果物のジェラート
- ジェラートの色
イタリアはジェラート王国。
街なかには、ジェラテリアがひしめいています。
星の数ほどあるジェラテリアの中から、美味しいジェラートに出会うコツはあるでしょうか?
イタリアでジェラテリアの店長に取材をして教えてもらったチェックポイントを、私自身の経験を交えて紹介します。
ジェラートが見えない
色とりどりのジェラートがこんもり山のように盛られていると、ビジュアル的に目を引き、インパクトもありますが、あえて保存容器に蓋をして、ジェラートが見えないジェラテリアを選びます。
ジェラートはデリケートで、絶えず空気に触れると風味が落ちてしまいます。
蓋をかぶせるのは、厳選された素材で作った自慢のジェラートをフレッシュな状態で提供するための配慮です。
また、保存料無添加のジェラートは長持ちしないので、大量に作り置きはできません。
旬の果物のジェラート
新鮮な果物から作られるフルーツのジェラートは季節によって種類が入れ替わります。
旬のフルーツを使ったジェラートが並んでいるジェラテリアが狙い目です。
その時期にしか味わえない、新鮮なフルーツの風味がギュッと詰まった旬のジェラートの美味しさは格別!
ジェラートの色
鮮やかな色のジェラートは一目で心を奪われます。
でも、鮮やかなジェラートばかりが並んでいたら、着色剤が添加されている可能性があります。
例えば、人気のピスタチオのジェラートはけっして華やかな黄緑色ではなく、くすんだグリーン、桃のジェラートはピンクではなく、地味な淡いベージュ色。
目を引く色に惑わされることなかれ。
地味でも自然な色のジェラートには素材本来の風味が生きています!
ジェラテリアでジェラートを買う!
- コーンかカップか選ぶ
- サイズを選ぶ
- ジェラートの種類(味)を選ぶ
コーンかカップか選ぶ
ジェラテリアに入ると、まずはコーンかカップか選びます。
ちなみにイタリア語でコーンは cono (コーノ)、カップは coppetta (コッペッタ)。
コーンとカップに加え、ブリオッシュという丸くてふんわりした甘いパンが選べるジェラテリアもあります。
ブリオッシュにジェラートを挟んで食べるブリオッシュ・コン・ジェラート (brioche con gelato) はシチリアの定番。
ボリューム満点で軽食代わりに頬張る人も。
サイズを選ぶ
コーンとカップのサンプルを見て、サイズを決めます。
サイズによって、選べるジェラートの数が決まります。
一番小さいサイズでも2種類、サイズが大きくなると選べる種類が増えます。
ジェラートの種類(味)を選ぶ
ジェラートの種類は目移りするほどたくさんあります。
店によっては、保存容器に蓋をして中身が見えず、文字だけが頼りになることがあるので、好きな味のイタリア語や英語を覚えておくと役立ちます。
どんな味か試してみたいと思ったら、人が少ない時間帯なら、店員さんに声をかけると味見させてもらえることも!
私は真夏はどちらかというとさっぱりしたフルーツ系が好みで、他の季節はフルーツ系もクリーム系もどちらも好きで、その時の気分に合わせて組み合わせていました。
ジェラートの歴史
紀元前からローマ時代
ジェラートの歴史は古代にまで遡り、氷雪で冷やした山羊のミルクと蜂蜜が飲食されていたことが旧約聖書の記録に残っています。
ローマ帝国の時代には、山から運ばれた氷雪を地下の氷貯蔵庫で保存して、フルーツジュースと蜂蜜、氷を混ぜたお菓子が嗜好されていました。
ローマ帝国の滅亡と共に、ジェラートはイタリアから姿を消してしまい、オリエントの世界で受け継がれます。
アラブから再びイタリアに
中世にアラブ世界の支配下にあったシチリアを経由して、再びイタリアにジェラートが帰ってきます。
アラブでは、ジェラートに蜂蜜の代わりに砂糖を加えたり、檸檬やオレンジなどの柑橘系のフルーツジュースを使用して、ジェラートの味のバリエーションが増えました。
そして、シャーベットに近い氷菓子からクリーミーなジェラートが生まれたのはルネッサンス期のフィレンツェです。
建築家で料理が趣味だったブォンタレンティが、ザバイオーネ(卵黄、砂糖、マルサラ酒を煮詰めたクリーム)とフルーツをベースにしたクリーミーなジェラートを考案し、宴会の席で招待者を驚嘆させました。
彼にちなんで名付けられた『ブォンタレンティ (Buontalenti) 』は現在もフィレンツェのジェラテリアで愛されるジェラートです。
ジェラートとアイスクリームの違い
日本のアイスは4種類
アイスクリームとジェラート、食べると感覚的に違うとわかりますが、具体的に何が違うのか気になって調べてみました。
まずは、日本のアイスについて簡単に整理します。
実はアイスは、乳固形分と乳脂肪分の量によって、『アイスクリーム』、『アイスミルク』、『ラクトアイス』の3種類に分けられ、この3つを総称して『アイスクリーム類』と言います。
食品衛生法に基づく、「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令(乳等命令)」において、次のように定義されています。
『アイスクリーム類』とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであつて、乳固形分3 %以上を含むもの(発酵乳を除く)をいう。
一方、アイスクリーム類に含まれない、乳固形分が3 %未満のアイスは氷菓に分類されます。
アイスの種類別の特徴
アイスクリーム類3種と氷菓の成分規格をまとめると、
アイスの種類 | 乳固形分 | うち乳脂肪分 |
---|---|---|
アイスクリーム | 15 % 以上 | 8 % 以上 |
アイスミルク | 10 % 以上 | 3 % 以上 |
ラクトアイス | 3 % 以上 | - |
氷菓 | 3 % 未満 | - |
アイスクリーム
アイスクリームは乳固形分と乳脂肪分が最も多く含まれているので、ミルクの風味が豊かでコクがあります。
また、植物油脂は添加できないと定められています。
アイスミルク
アイスミルクはアイスクリームより乳固形分と乳脂肪分が少なく、さっぱりしています。
ラクトアイス
ラクトアイスは乳固形分がさらに少なく、乳脂肪分の成分規格がないため、あっさりした味です。
氷菓
氷菓には、乳固形分がほとんど含まれません。
果汁を凍らせたアイスキャンデーやかき氷などが該当します。
ジェラートはコクがあるのにヘルシー
イタリアでジェラートがどのように定義されているか調べたところ、日本のように法律で定められた定義が見つかりませんでしたが、ジェラートとアイスクリーム類の違いは、次の2つが関係しているようです。
- 乳脂肪分
- 空気含有量
乳脂肪分
ジェラートの乳脂肪分は3~10 %くらいで、幅があります。
一口にジェラートといっても、ジェラテリアによって、またクリーム系とフルーツ系では食感や味わいに違いがあることからもうなずけます。
日本の分類では、アイスクリームよりもアイスミルクになりますが、きっちりとは当てはまりません。
アイスクリームと比べて、ジェラートは乳脂肪分が低くてヘルシー、素材の味がしっかり感じられ、濃厚なのにさっぱりした味わいです。
空気含有量
ジェラートの空気含有量(オーバーラン)は20~45 %
一般的なアイスクリームのオーバーランは60~100%。
オーバーランが低いとコクのある風味になり、高いとフワッと軽い食感になります。
ジェラートはアイスクームよりオーバーランが低いのが特徴で、密度が濃く、滑らかな口当たりで、素材の風味がよりひきたちます。
毎日のように食べたいイタリアのジェラート
ジェラートは空気含有量が少ないため、滑らかな口当たりで、コクがあり、素材の風味がしっかり感じられ、乳脂肪分が少ないため、低カロリー。
イタリアでは日常的にジェラテリアでジェラートを食べる習慣があり、とても身近なスイーツ。
夏になると、行きつけのジェラテリアに行ってはテイクアウトして、夜風に当たりながら、冷たいジェラート片手に友達とおしゃべりして過ごした日々が楽しい思い出です。
帰国後はジェラートが遠い存在になり、どこか寂しく感じます。
イタリアから日本に進出したジェラートや日本生まれのジェラートを何度か食べてみて、ジェラートが日本でも楽しめるようになって嬉しい反面、気軽な路面店よりも、デパートに出店するなど高級志向の店舗が多く、毎日でも通えるお手軽感がないのが残念。
夏が近づくと、イタリアのジェラートが恋しくなります。
イタリア人は食に関しては保守的な印象が強いですが、ジェラートは別腹、別口?なのか、次々に新しいジェラテリアがオープンしています。
次にイタリアに行ったら、お馴染みのジェラートを食べるのはもちろん、どんな新しいジェラートに出会えるのか楽しみです。