海外移住者が一時帰国中に病気や怪我をしたら・・・?
一般的に海外に移住すると、日本の住民票を抜く必要があります。
住民票を抜くと、国民健康保険に加入できません。
そのため、一時帰国中に日本の医療機関を受診した場合、診療費は全額自己負担になります。
一時帰国中に保険証なしで緊急入院、入院診療費を全額自己負担した実体験を基に、海外在住者が日本で医療機関を受診するとどうなるか、国民健康保健加入の可否、健康保険をどうしているかなどの実態をまとめました。
海外移住すると日本の健康保険はどうなる?
海外転出について
一般的に1年以上海外に居住する場合は、住民票がある自治体に『転出届』を提出し、住民票を抜く必要があります。
住民票を抜くと、住民登録が抹消され、税金や国民年金保険料、国民健康保険料の納付義務がなくなる反面、年金の受給が少なくなり、健康保険には加入できなくなります。
つまり、国内で医療機関を受診すると全額自己負担になります。
役所に本人確認書類を持って、転出届を提出すれば手続きできます。
イタリア滞在中の保険について
私の場合、イタリア留学前に役所に問い合わせると、住民票を抜く抜かないは最終的に本人が判断すれば良いと説明を受けました。
留学中は収入がないため、社会保険料を支払う余裕はないと判断して、転出届を提出、住民票を抜きました。
そして、渡航前に海外旅行傷害保険に加入。
数年後、イタリアの国民健康保険サービス (SSN : Servizio Sanitario Nazionale) に加入しました。
SSN 加入者には保険証が発行され、かかりつけ医がつきます。
信頼できる先生に出会い、体調が悪いとまずはかかりつけ医に診てもらうというシステムに慣れ、イタリアで安心して医療を受けることができるようになりました。
日本で医療機関を受診すると全額自己負担
日本に一時帰国した時に、何度か医療機関を受診しました。
健康保険に加入していないので、全額自己負担です。
普段はイタリアの健康保険で医療を受けていたので、日本では仕方のないことだと納得の上、必要な医療のみ受けました。
一時帰国中に無保険で入院した体験談
保険証なしで入院診療費を全額自己負担
一時帰国中に遠方で倒れて救急車で運ばれ、数日入院したことがあります。
地元に戻って精密検査を受けることを条件に、主治医の先生から退院許可がでました。
退院できてホッとしたのもつかの間、健康保険に加入していないので、入院診療費は全額自己負担。
10万円を超え、かなり痛い出費になりました。
国民健康保険に加入
実家に戻って、さらに病院で精密検査を受けるとなると、健康面の不安に加え、経済的な負担も心配になり、役所に相談してみることにしました。
状況を説明して、国民健康保険に加入できるかどうか確認してみると、帰国日について尋ねられました。
帰国後14日以内なら、転入届を出して住民登録をすれば、国民健康保険に加入できます。
さらに、「加入日が入国日に遡るので、支払済みの入院費についても保険適用できますよ。」と職員さんに教えてもらいました。
同日、転入届を提出して住民登録、国民健康保険に加入しました。
もちろん、加入期間中の国民健康保険料の納付義務が発生します。
国外からの転入届に必要なもの
- 戸籍謄本
- 戸籍の附票
- パスポート
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)と戸籍の附票
不要な場合があるので、事前に役所に確認したほうが良いでしょう。
パスポート
入国日を証明するために必要で、本人確認書類にもなります。
パスポートに入国スタンプが無い場合は、搭乗券の控えなどで証明します。
保健証がないと通常より高い診療費が設定される!
入院した病院に国民健康保険に加入したことを連絡すると、医療費を再計算してもらうことになりました。
支払済みの金額の3割負担になると思っていたところ、送付された明細にはそれよりも低い金額が記載されていました。
入院診療費の元の金額が下がっていたのです。
病院に問い合わせると、「保険証のない方には自由診療として入院診療費を設定しています。」と回答がありました。
保険証がないと、医療費が全額負担になるだけでなく、診療費自体が通常より高く設定されていたのです!
医療機関によっても対応は異なるでしょうが、保険適用してもらえてほっとした一方、日本で保険証なしで受診したらこんな扱いを受けるのかと驚きました。
後日調べてみると、保険証を持たずに受診すると、病院によっては自由診療として治療費が計算される場合があるようです。
ずっと日本で暮らして、当たり前のように健康保険証を持っていれば、知ることのなかった現実です。
イタリアで外国人として、時には理不尽な現実に悩む自分と同じように、日本在住の外国人も日本人が知らない苦労があるのだろうと察しました。
海外在住の日本人は健康保険をどうしてる?
- 健康保険加入 (住民票を残している)
- 健康保険未加入 (住民票を抜いている)
健康保険に加入(住民票を残している)
イタリアに戻って、帰国中の出来事を日本人の友達に話すうちに、さまざまなことがわかりました。
日本の住民票を抜いて、健康保険がないのが普通だと思っていたら、意外にも健康保険に加入している人が何人もいました。
ご家族の意向や事情など理由や種類はさまざまですが、3、4人に1人くらいの割合で日本に住民票を残して、健康保険に加入していました。
帰国する度に日本で健康診断を受けている人も。
特にイタリアでは歯科は保険適用できないため、帰国の度に日本で歯科検診を受けている人が一定数いました。
健康保険に未加入(住民票を抜いている)
住民票を抜いて、健康保険に加入していない人のほうが多数派です。
私は無保険で入院したことを機に、役所に相談して初めて一時帰国時に転入届を出して住民登録をすると、国民健康保険に加入できることを知りましたが、それが可能なことを知っている人もいました。
帰国する度に手続きをして保険に加入している人もいるそうです。
一方で、海外に居住している人が一時帰国中に国民健康保険の資格を取得できないと定めている自治体も少なくありません。
自治体によって対応が異なるようです。
一時帰国者の転入届について、ウェブサイトに条件を明記している自治体もあります。
可否については、日本での居住先がある自治体に事前に確認しておきましょう。
いざという時のために、医療保険制度の知識を!
海外に生活拠点を移したら、基本的には移住先の保険に加入して、現地で安心して医療を受ける環境を整えることが重要です。
それでも、一時帰国中に日本で病気や怪我、不慮の事故などで医療機関のお世話になることがあるかもしれません。
多くの人は日本の健康保険証がないため、医療費は全額自己負担になる上に、自由診療として通常よりも高い診療費が計上されるケースもあります。
本当に困った時は、役所に相談する価値はあるかもしれません。
実家など住民票を登録できる居住先があることや、帰国して14日以内であることが前提になりますが、住民登録をして国民健康保険に加入できる可能性があります。
私は自治体の職員さんに親身に対応してもらい、国保に加入することができてとても幸運だったと思います。
幸い精密検査でも異常は見つからず、大事に至りませんでした。
突然の入院を通して、いつ何が起こるかわからないことを痛感し、健康保険のありがたみや無保険で医療を受けるリスク、医療保険制度など多くのことを学びました。
海外に移住する際は安易に住民票を抜かずに、どのような影響があるのかしっかり認識した上で、自分の状況に合わせて判断したほうが良いと思います。
備えあれば憂いなし。
医療保険制度の知識を身につけ、自分の状況をきちんと把握して、必要に応じて対応できるようにしておくことが大切です。