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産地や品種で風味が違うイタリアのオリーブオイル、使い分けて楽しむ!

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色づき始めたオリーブの果実

オリーブオイルはオリーブの果実のみから抽出されるオイルです。

主に地中海沿岸諸国で生産され、イタリアも主要生産国のひとつ。

イタリア全土で良質のオリーブオイルを生産、栽培されるオリーブの品種が多く、産地や品種によってオリーブオイルの風味が違うのが特徴です。

調理にはもちろん、サラダのドレッシングに、温かいスープの上にかけて風味づけしたりと出番が多く、オリーブオイルを使わない日はないといっても過言ではない程、イタリアの食卓にかかせない食材です。

オリーブオイルについて、イタリアのオリーブオイルの特徴やオリーブの収穫からオリーブオイルの製造工程、エキストラ・ヴァージン・オリーブオイルの特徴や保存方法などをまとめました。

オリーブオイルの生産国

オリーブオイルとは?

オリーブオイルとは、オリーブの果実のみから抽出されるオイルです

菜種油、ごま油、ひまわり油など多くの植物油は種子から採れる油に対し、オリーブオイルは果実から採れる油です。

油分をたっぷり含んだ果実そのものからオイルを採るため、産地や果実の特徴、栽培条件等がそのままオイルに受け継がれます。

つまり、オリーブオイルは果実を搾ったオリーブジュースなのです。

オリーブオイルの生産量ランキング

オリーブオイル生産量ランキング 2022年

順位国名
1スペイン
2ギリシャ
3トルコ
4イタリア
5モロッコ
資料: GLOBAL NOTE 出典: FAO (Food and Agriculture Organization)
 

オリーブオイルの生産量のトップ5は全て地中海沿岸諸国

1位はスペインの3,940,070トン、2位はギリシャの3,045,100トンです。

イタリアは以前、世界で2番目の生産量を誇っていましたが、2022年はギリシャやトルコに続く4位です

日本に輸入されているのはイタリア産が多いので、オリーブオイルといえばイタリアというイメージが強いように感じるせいか、個人的にはイタリアが4位というのはちょっと意外な結果です。

イタリアのオリーブオイル

イタリア語でオリーブオイルは olio di oliva (オーリオ・ディ・オリーヴァ)。

イタリアでは、オイル (olio) と言えば、オリーブオイルに等しいくらい、オリーブオイルは毎日の食卓に欠かせない食材です

イタリア産のオリーブオイルはとにかくバラエティ豊かで、オリーブの品種は600種類以上

品種の多さにかけてはスペインを上回ります。

また、長年培われてきたオリーブ栽培の技術力に長け、常に高品質なオリーブオイルを製造しています。

イタリアのオリーブオイルの特徴

地域によってさまざまな品種

イタリア全土でオリーブを栽培していますが、プーリア州、カラブリア州、シチリア州など南部でイタリア全土の生産量の約70 %占めます。

イタリアは南北に長い地形のため、地域によって多種多様な品種を栽培しているのが特徴。

イタリア産のオリーブオイルは産地によって特徴が異なり、フルーティーな風味や辛みや苦みがある風味、マイルドな風味など、さまざまなタイプのオリーブオイルを楽しむことができます。

一般的にリグーリアやガルダ湖など北イタリア産のオリーブオイルは軽くて繊細な風味、魚料理などデリケートな料理に適しています。

イタリア中部のトスカーナ地方は上質のオリーブオイルの産地として知られ、緩やかな丘陵地に連なるオリーブ園はのどかな田園風景のシンボル的存在。

トスカーナ産はフルーティな香りに存在感のある味で、最後にピリッと苦みを感じるのが特徴で、サラダやトーストしたパンにトマトをのせるブルスケッタや野菜スティックをつけて食べるピンツィモーニオなどに合います。

南イタリア産はフルーティで香り高く、マイルドでバランスのとれた味が特徴で、サラダやシーフードをはじめ幅広い料理に合わせやすいです。

イタリア人とオリーブオイル

イタリア中部以南では、オリーブオイルは毎日消費する必要不可欠な食材です

サラダに、パンに、パスタに、魚や肉など、さまざまな料理や食材の味を引き立ててくれます。

イタリアでは、大型スーパーの陳列棚に数メートルに渡ってオリーブオイルが並んでいたり、オリーブオイル専門店があったり、その品数と種類の多さに圧倒されます。

イタリア人にとって、オリーブオイルは口にしない日がないほど、身近な食材なのです。

晩秋から初冬にかけてはオリーブの収穫の季節。

収穫されたばかりの絞りたてのオリーブオイルのボトルに『novello!』(ノヴェッロ)のタグがつきます

イタリア語で『新しい』の意味で、訳すと新油(オイル)。

日本ではフランス語の『nouveau』(ヌーヴォー)の方が馴染みがあるかもしれません。

『novello』のボトルを見つけると、家にまだ残っていても構わず買って、絞りたてのオリーブオイルを味わうのが楽しみでした。

各地で収穫祭が催され、搾りたてのエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルのお披露目されます。

また、多くの家庭では、家族や親戚が作るエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルを使っています。

私の知り合いのイタリア人家族やルームメイトも、市販のオリーブオイルは買わずに、家族や親戚などが作ったオリーブオイルをたっぷり保管して、毎日使っていました。

個人差はあれ、市販や自前、産地や品種の違う良質のエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルなど数種類を使い分ける人が多いです。

オリーブの収穫からオリーブオイルができるまで

トスカーナのオリーブ園を取材

捕集用ネットを敷いて、はしごに登ってオリーブを収穫

イタリア在住時に、知り合いのオリーブ園で収穫の様子と製油所を見学しました。

トスカーナのなだらかな丘陵地に、のどかな田園風景が広がる標高約400 mのオリーブ園は段々畑状で日当たりが良く、害虫被害が少ないため、オリーブの栽培に適しています。

オリーブの木が太陽の光をたっぷり浴びられるように、専門家による剪定が行われ、また収穫作業の効率化のために木は低めに保ちます

大切に育てられたオリーブの木1本の果実からできるオリーブオイルは平均でわずか1 L程度だそう。

トスカーナのオリーブオイルはクオリティの高さで有名ですが、それは恵まれた環境と生産者の絶え間ない努力により成しえるのだと実感しました。

オリーブオイルができるまで

オリーブの収穫

クオリティの高いオリーブオイルを作るには、オリーブの実が色づく11月から12月の初旬の収穫がベストだそう

オイル用のオリーブの実は食用と比べて小粒です。

収穫は手作業で行われ、一粒ずつ手で摘み取られた実が木の下に敷かれた捕集用ネットの上にどんどん落ちていきます。

高いところになる実は、はしごに乗って摘み取っていきます。

果実が全て摘み取られるとネットを寄せ集めて、大きな容器に移し入れ、次のオリーブの木の収穫に移ります。

葉と枝の除去と洗浄

収穫したオリーブの果実

収穫したオリーブは早く加工すればするほどよい(24時間以内)と言われています

通常、夕方にその日収穫されたオリーブが製油所へ運ばれます。

よほど大きな農園でない限り、自社で設備を所有することはまれで、一般的に各農家が収穫したオリーブを製油所に持ち込みます。

オリーブオイルの製油所は全工程が流れ作業で近代的な設備が整い、持ち込んだオリーブの重さを基準に設備の使用料を支払うシステムです。

最初に、機械で葉や小枝を取り除き、洗浄機で水洗いされます

破砕(はさい)

石臼や機械でオリーブの実を丸ごと押しつぶし、ペースト状にします

攪拌(かくはん)

ペースト状になったオリーブをパンの生地を練るようにこねます。

風味を失わないよう、温度を30度以下に保ち、1時間近くゆっくりとこねることがポイントだそう。

攪拌はオイルの風味をより豊かにする大切な工程です

オイルの抽出

時間をかけてかき混ぜられたペーストに圧力をかけ、オイル(水分を含んだ果汁)を搾り出し、搾りかすと分離されます

伊語で絞りかすは sansa (サンサ)。

この搾りかすから、さらにオイルを抽出して加工され、olio di sansa di oliva (サンサ・オリーブオイル)として市場に出ます。

遠心分離

絞りたてのヴァージン・オリーブオイル(一番搾り)

最後に、水分を含んだオイルを遠心分離機にかけて、余計な水分を取り除き、オイルだけが抽出されます

これが、いわゆるヴァージン・オリーブオイル(一番搾り)です!

オリーブオイルは絞りたてがピーク

トスカーナ産の絞りたてのエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルは深い緑色で、芳醇な香り、試飲するとピリッと舌を刺激しますが、デリケートな味わいです。

このオリーブオイルとトスカーナ地方伝統の無塩パン、pane toscano (パーネ・トスカーノ)との相性の良さは抜群。

絞りたての輝く緑色のエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルを一振りすると、フルーティな香りがふわーっとたちあがり、その素朴な美味しさの虜になってしまいます。

パンに絞りたてのオリーブオイルをかけるだけのシンプルな贅沢。

生産者によると、オリーブオイルは絞りたてが一番風味が豊か。

熟成により進化するワインとは違い、オリーブオイルは時間と共に風味が落ちるので、早うちに消費したほうがよりおいしさを堪能できるそうです

オリーブオイル豆知識

エキストラ・ヴァージン・オリーブオイルの特徴

ヴァージン・オリーブオイルとはオリーブの果実を搾って濾過(ろか)しただけの、なんら化学的処理を行わない一番搾りのオイルです。

ヴァージン・オリーブオイルのなかでも、酸度が0.8 %以下の良質なオイルだけがエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルと名付けられます

イタリア語では、olio extra vergine di oliva (オーリオ・エキストラ・ヴェルジネ・ディ・オリーヴァ)。

最高級のエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルには、オリーブオイル特有の風味がぎゅっと詰まっているので、火を加えずにそのまま豊かな風味を味わいます

一般的にはサラダや、肉や魚などの料理の仕上げに向いています。

イタリアではサラダにドレッシングをかける習慣がなく、各自が自分好みに塩胡椒とオリーブオイル、好みの酢を合わせます。

イタリアの特産バルサミコ酢と合わせても美味。

風味豊かなエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルが野菜の美味しさを引き立ててくれます。

オリーブオイルの保存法

オリーブオイルの保存のポイント

冷暗所に保管

オリーブオイルは紫外線により退色したり風味が変わったりして劣化します

そのため、オリーブオイルの容器に光を遮断する濃い色のボトルが使われています。

なので、オリーブオイルは高温を避け、光の当たらない暗い場所に保管しましょう

また、エキストラ・ヴァージン・オリーブオイルは時間の経過ともに風味が落ちるので、早く消費するのが鉄則。

特に開栓後は空気に触れると酸化しやすくなるので、使い終わったらしっかりと栓をして、早めに使いきりましょう。

一般的にオリーブオイルの賞味期限は1年半から2年です。

とはいえ、オリーブオイルの風味を最大限に賞味するには、できるだけ早く消費するのがおすすめです

そして収穫時期が来ると、ノヴェッロを味わうのが最高の贅沢です。

オリーブオイルで健康に

イタリアをはじめ、ギリシャやスペインなど地中海沿岸地域を中心に実践されている地中海式食事法は、健康的な食事法として注目を集めています。

油はオリーブオイルを使っていることがポイント。

オリーブオイルはオレイン酸が豊富で抗酸化力が高いのが特徴

悪玉(LDL)コレステロールを抑制する効果があり、 血管の健康を保ち、生活習慣病を予防するといわれています

オリーブオイルはおいしいだけでなく、体にも良い食材なのです!

毎朝スプーン一杯飲むと健康に良いそうです。

オリーブオイルショック

昨年からオリーブオイルの価格が高騰。

円安の影響による輸入品の価格の高騰に加え、地中海地域が天候不良に見舞われ、2022年と2023年に2年連続で不作となり、オリーブオイルは記録的水準に値上がりしました

このままではオリーブオイルが使えなくなると危惧していましたが、今季は収穫量が増えるようでホッとしています。

ただ、すぐに価格に反映されるわけではないので、オリーブオイルショックが終結するまでもう少し時間がかかりそうです。

オリーブオイルショックに令和の米騒動を目の当たりにして、作物は天候に左右されるので、避けられないのかもしれませんが、食生活に欠かせない食材が急騰すると、心穏やかには過ごせません。

まずは、今年のオリーブの収穫が無事に終わり、早くオリーブオイルの価格が落ち着いてくれることを願うばかりです。

イタリア産オリーブオイルの使い分け

イタリアの食習慣を身につけて、帰国後も変わらないことのひとつが日常的にオリーブオイルを使っていることです。

パスタやサラダ、熱々のスープに、イタリアのオリーブオイルが欠かせません。

サラダにはイタリア風に上質のエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルとワインミネガーをかけます。

日本には和風、フレンチ風、イタリア風などさまざまな種類のドレッシングが出回っているので、たまにドレッシングをかけますが、個人的にはオリーブオイルで和えるサラダが一番野菜の美味しさをストレートに味わえると感じ、飽きがきません

なので、外食時にサラダにドレッシングがたっぷりかかった状態で運ばれると、がっかりすることも。

さすがに、イタリアで暮らしている時と同じように、ふんだんに使うことはできませんが、私にとってはイタリアのオリーブオイルは必需品。

イタリア在住時から変わらず、市販のオリーブオイルと、ちょっといいオリーブオイルを使い分けています

最近のお気に入りは、京都の上質な絹ごしにシチリア産のマイルドなエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルを少したらして食べる冷や奴。

白い豆腐に緑色のオリーブオイルが見た目にも映え、大豆のまろやかで繊細な風味とのハーモニーが新鮮で、食欲をそそります。

イタリアで毎年絞りたてのノヴェッロを味わった小さな幸せを思い出すと、今年の絞りたてのエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルを味わえる日が待ち遠しく感じます!