イタリアの代表的なクリスマス菓子といえば、パネットーネとパンドーロ。
12月が近くなり、空気が冷たく感じる頃、パティスリーでは手作りのパネットーネやパンドーロが店頭を飾り、スーパーでは色々なメーカーのカラフルな箱がにぎやかに並び始めます。
日本のクリスマスは華やかなデコレーションケーキに人気が集まりますが、近年はドイツのシュトーレンや、イタリアのパネットーネやパンドーロなどさまざまな国のお菓子を見かけるようになりました。
日頃ケーキに目がない私も、パネットーネやパンドーロにはクリスマスとは切っても切れない親しみを感じます。
イタリアのクリスマスや地方の伝統的なクリスマス菓子の紹介と、人気を二分するパネットーネとパンドーロについて、その特徴と誕生の地や形状、生地の違い、楽しみ方などをまとめました。
イタリアのクリスマスと郷土色豊かな伝統菓子
イタリアのクリスマス
クリスマスはイタリアで一番大きなイベントです。
普段は親元を離れて暮らしている学生も社会人も、クリスマス休暇には実家に帰省して家族でクリスマスを祝います。
日本のお正月のようなイメージです。
イタリア語で12月25日クリスマスは Natale (ナターレ)、12月26日聖ステファノは Santo Stefano (サント・ステファノ)、両日とも祝日で、ほぼ全てのショップやレストランもお休みです。
この日は観光客泣かせで、12月25日にツアーで移動中のランチはアウトグリル(高速道路のサービスエリア)だったと日本人のクライアントさんから何度か話を聞きました。
クリスマスの思い出と言えば、イタリア留学の最初のクリスマス休暇に、シチリア島出身の友達の家に招いてもらったことです。
クリスマスイヴにはお父さん方の親戚一同、クリスマスにはお母さん方の親戚一同とクリスマスの食卓を囲み、昼前から夕方までお腹がはち切れるくらいご馳走を食べ続けました。
そして、最後はやっぱりスイーツ。
手作りのスイーツに、市販のパネットーネなど何種類ものクリスマス菓子が次から次へと出てきます。
みんなお腹いっぱいと言いながらも、はち切れんばかりの笑顔で美味しそうにスイーツを頬張っている様子を思い出すだけでも幸せな気持ちになります。
地方で受け継がれる伝統的なクリスマス菓子
郷土料理が受け継がれるイタリア料理、スイーツも郷土色豊かです。
クリスマスも各地の伝統的なお菓子で祝います。
トスカーナ州の古都シエナは、アーモンドやヘーゼルナッツ、砂糖漬けフルーツを練り込んだ panforte (パン・フォルテ)、南イタリアではヌガー菓子 torrone (トッローネ)が有名です。
そんなイタリアで人気を二分する代表的なクリスマス菓子は、ミラノ生まれのパネットーネとヴェローナ生まれのパンドーロです。
ミラノ生まれ、ドーム型の『パネットーネ』
パネットーネとは、『大きなパン』
パネットーネは約500年前にミラノで誕生し、クリスマス用に家庭で焼かれた銘菓です。
誕生秘話は諸説あり、謎に包まれた一面も持っています。
時を経て、イタリア全土に広がり、今ではイタリアで最も人気のあるクリスマス菓子です。
パネットーネはイタリア語で panettone と綴り、 pane (パーネ)の指大辞で『大きなパン』という意味です。
バターの香りが広がる、ざっくりと柔らかく、甘い生地が特徴。
小麦粉と卵とバターの生地にオレンジピールやシトロンピールなどの砂糖漬けフルーツとレーズンを混ぜ込んだオーソドックスなパネットーネから、チョコレートや木の実等を用いた進化型までバリエーションが豊富です。
『大きなパン』という名前にふさわしく、標準サイズは1kgというボリュームで、家族や親族が大勢集うイタリアのクリスマスにぴったりです。
豪華な食事の最後に、「もうお腹いっぱい!」と口々に言いながら、細く切り分けたパネットーネを皆でいただきます。
ドルチェは別腹、みんなを笑顔にしてクリスマスの集いの最後を飾ります。
パネットーネ作りの取材談
イタリアのパティスリーでパネットーネ作りを取材したことがあります。
パネットーネは酵母を用いてじっくりと時間をかけて発酵させ、長い時間と手間をかけて作られています。
- 最初に生地をこねて、休ませ(発酵)、少しずつ材料を加えながら数回に分けて生地をこねる
- オーブンで焼く
- 焼き上がった熱々のパネットーネの粗熱をとる
- ふっくら膨らんだパネットーネがしぼまないように逆さに吊して冷ます
取材した工房では36時間かけて丁寧に作られていました!
できたてのパネットーネがずらーっと並び、甘く芳ばしい香りが漂う厨房の光景はとても印象に残っています。
出来上がったクリスマス菓子をラッピングする店員さんの表情もどこか楽しそうで温かくワクワク感に満ちていました。
ヴェローナ生まれ、星形の『パンドーロ』
パンドーロはイタリア北部のヴェローナの銘菓です。
ヴェローナといえば、古代ローマ時代の円形闘技場やシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の舞台としても有名です。
パンドーロはイタリア語で pandoro 、oro (オーロ)は金色、『黄金のパン』という意味で、その名の通り黄金色の生地が特徴です。
パンドーロの歴史は古代ローマ時代に遡るとも言われていますが、現在のパンドーロに由来するのは13世紀のヴェネツィア貴族の間で広まっていたそう。
8つの角を持つ星型で、すらっと背の高いパンドーロは卵とバターをたっぷり使った生地を発酵したお菓子です。
食べる直前に付属の粉砂糖をまぶすと、雪化粧したように華やかになります(画像のパンドーロは自分好みで少ししかかけていませんが、一般的には全体にまぶします)。
こんがりと焼き上がったパンドーロにナイフを入れると、きれいな黄金色の生地が顔を出し、ふわっとバターとバニラの香りが広がります。
しっとりと柔らかいパンドーロは、シンプルに生地そのものの風味を楽しみます。
パネットーネと同じように、チョコレートチップが入っていたり、コーティングされていたり、新しいテイストのパンドーロもあります。
パネットーネとパンドーロの違い
パネットーネとパンドーロはどちらも酵母を使って生地を発酵するパン菓子です。
本場イタリアでは、クリスマス前になると街のそこかしこで「どっちが好き?」とか、パネットーネ派とパンドーロ派がそのおいしさを熱く語り合う声が聞こえてきます。
パネットーネとパンドーロの違いを簡単にまとめると、
パネットーネ | パンドーロ | |
---|---|---|
生まれ | ミラノ | ヴェローナ |
形 | ドーム型 | 星形(頂点8つ) |
生 地 | 砂糖漬けフルーツとレーズン入り | 基本プレーン |
ちなみに、個人的にはどちらも好きですが、どちらか選ぶならパンドーロ派です。
クリスマス菓子は家族や親戚と賑やかに楽しむ
パネットーネもパンドーロもスーパーに並ぶ箱に詰められた大量生産品とパティスリーで手作りされる品では、味も価格も大きな違いがあります。
そして、パネットーネもパンドーロもどんどん進化しています。
伝統的なレシピで作られるパネットーネやパンドーロは定番として絶対押さえておきたいし、新しいバリエーションも試してみたい、甘い誘惑にはキリがありません。
開封しなければ保存できるので、今年はパネットーネにしようか、パンドーロにしようか、どこの店にしようか、どのメーカーにしようか、どれにしようかと、沢山の選択肢の中から選ぶのがクリスマス前の楽しみでした。
そして、買っておいたパネットーネやパンドーロをクリスマスから新年にかけて、人が集まる度に味わいました。
帰国してからは、パネットーネもパンドーロも口にする機会が減ってしまい、少し寂しい気がして、この時期になるとこのクリスマス菓子が恋しくなります。
イタリアでは大切な家族や親戚と共にクリスマスを迎え、食卓を囲み、大きなパネットーネやパンドーロをみんなで分け合って、一緒に過ごす時間が何よりも尊いのだと思います。
Buon Natale (ブォン・ナターレ)!!!
素敵なクリスマスを!